オフショア開発においてミャンマーが安価である理由と特徴

オフショア_ミャンマー

あなたは今、オフショアを検討しているが、様々な国の選択肢がある中で、なぜ「ミャンマー」が最安値で開発できるのか気になっているところではないでしょうか。オフショア開発で長らく活用されてきたASEAN諸国でミャンマーが比較的安価であることは良く耳にするところです。

それではなぜ、ミャンマーが安価でできるのか、オフショア拠点としてラボを開設してから10年経ち、東建コーポレーション様やカインズ様といった誰でも耳にしたことあるような会社との取引を多数実績として持っている会社に所属している私がその背景とともに、実際にミャンマーで開発するとき起こりうるリスクとその対策を交えて紹介したいと思います。

そして、様々なリスクを理解していただき、オフショア開発拠点(国)を選定する上で1つの参考になればと思います。

1.オフショアでミャンマーを選択するメリット

この章ではミャンマーを選択するメリットを紹介いたします。

1-1.ミャンマーがオフショア主要国で最安値

オフショア主要国における費用感は以下の通りです。
※各国で販売されている売価を元に調査。オフショア開発白書2023年度版調べ。
人月単価(万円)プログラマー

シニアエンジニア

ブリッジSE

PM
ベトナム

40.22

49.1357.5757.94
フィリピン35.8353.3381.2565.83
インド50.8368.7594.29111.43
バングラディッシュ44.1346.1390.9658.63
中国50.5161.7979.2985.77
ミャンマー27.4754.1668.3362.81
※ プログラマー:コーディングや簡単なシステム開発を担当
※ シニアエンジニア:システム設計や開発を担当
※ ブリッジSE:ビジネスサイドとエンジニアサイドを繋ぐ役割を担うエンジニア
※ PM(プロジェクトマネージャー):プロジェクトにおける計画と実行の責任者
プログラマーで見るとミャンマーが最安値であることが分かります。
プロジェクトの規模によって異なりますので、プログラマーは1人で対応できるような案件であればミャンマーを選択するメリットは薄まるかもしれません…。

 

なぜ最安値でできるのか…
単純に周囲の諸外国と比較して人件費が低賃金だからです。
工科系大卒者のエリート層でも平均30,000円の月給です。東南アジア地区最後の経済未開拓エリアとも言われています。

1-2.ミャンマーのエンジニアは優秀

安価ながらも、ミャンマーのエンジニアは優秀な人が多いです。
その背景として、ITPECアジア共通統一試験のIP分野において、ミャンマーの合格率が3回連続でトップを記録しています。
ITPEC試験の合否の統計の表
※ITPECアジア共通統一試験とは…
ITの知識及びスキルを問うことでIT人材を評価する試験で、加盟各国で同一の問題で同一日に実施されている試験のこと。現在のITPEC加盟国はフィリピン、タイ、ベトナム、ミャンマー、モンゴル、バングラディシュの6か国あります。
※IP分野とは…以下の知識を持っているか推し量るテストです。
  • セキュリティやネットワークなどのITに関する基礎知識
  • 企業活動、経営戦略、会計や法務に関する基礎知識
  • 課題解決のため、システム的な考え方や論理的な思考力を持ち、かつ、問題分析及び問題解決手法に関する基礎知識
  • 自らが担当する業務の効率化のため、オフィスツールも活用
  • 情報セキュリティリスクを回避するため、関連法規等の各種規定に従って業務に取り組む

1-3.性格が日本人に似ている

ミャンマー人は性格が日本人と近しいところがあり、コミュニケーションを取る感覚は対日本人とあまり変わりません。そういう意味では、コミュニケーションは取りやすいと思います。

 

「年功序列を重んじる」:組織内のルールや上司の指示をしっかりと守る
「自己主張が少ない」:目上の人に対して反抗することが少ない
「叱責になれていない」:反抗することが少ないので、家庭や社会で叱責されるケースが少ない

 

いずれも日本人の性格に似ていますね!

2.オフショアでミャンマーを選択するデメリット

1章ではメリットを紹介しましたが、一方でデメリットもあります。デメリットも理解した上で、それでもミャンマーを選択するか、最終的に判断するようにしましょう。

2-1.ミャンマーは社会情勢が不安定

2021年2月1日にミャンマー国軍による大規模なクーデターが発生し、被害として累計死者数:約2,900人、不当逮捕者数:約15,000人と言われています。一時的にインターネット・電力・銀行等の生活インフラがストップしましたが、3年経過した今日では、クーデター前の状況に戻ってきました。それでも、反政府武装組織が爆弾事件等のテロ事件はゼロではありません。
外務省が出している危険レベルでは、レベル2 or 3と比較的危険領域に入っています。
ミャンマーの危険レベルを地図上に著した画像

2-2.ミャンマーの優秀な人材は海外進出を狙う

前述のクーデターの影響もあり、社会情勢の不安定さや低賃金ということで優秀な人材は海外に移住する人がほとんどです。20代前半のうちに移住するための資金を貯め、20代後半には海外へ移住するケースが多いと言われています。
逆にミャンマーに残るケースとしては、家庭を持った人、親の都合等があります。30代ぐらいになると、ミャンマーにそのまま残るケースが多くなるようです。(ミャンマーオフショア会社からの情報)
そのため、ミャンマーのオフショア会社は人材の出入りが激しいです。
すごく優秀な人にプロジェクトに携わってもらえていたが、途中で離脱してしまったり、そうなると引継ぎがちゃんとできるのか等、心配事が増えてしまいます。ミャンマーのオフショア会社に依頼する場合は、優秀な人材は途中で離脱する可能性が高いという前提でいた方が良いでしょう。

3.ミャンマーのオフショア会社を選ぶポイント

ここまで国としての特徴を取り上げてきました。ここからはオフショアを依頼する国は、「ミャンマー」にする!と決めた方向けになります。
国を決めて、次に会社選びをすることになります。会社を選ぶ上で気を付けておきたいポイントがいくつかありますので、紹介します。

3-1.日本に本社があり、日本人が経営

オフショア会社は全部で6パターンに分けることができます。その中でタイプAの会社を選ぶようにしましょう。
タイプ本社所在地経営者
A日本日本人
B日本ミャンマー人
C日本ミャンマー、日本人以外
Dミャンマー日本人
Eミャンマーミャンマー人
Fミャンマーミャンマー、日本人以外
タイプD~Fのようなミャンマーに本社がある会社は基本的にブリッジSEがミャンマー人になるケースが多いので慣れない言語でのコミュニケーションに苦労する可能性があります。また、契約関係もミャンマーの法律を多少は勉強する必要が出てきます。

3-2.日本人ブリッジSEが在籍

ブリッジSEは開発を進めるうえで最重要人物になります。ブリッジSEの力量によってそのプロジェクトの運命が決まると言っても過言ではないでしょう。
その力量を事前に推し量る必要がありますが、様々な視点で評価するようにしましょう。大前提として、ブリッジSEは必ず日本人が立ってくれる会社を選ぶのが重要です。
  • 日本人である(ブリッジ以外のエンジニアは現地の人でOK)
  • エンジニア出身で、開発ノウハウを持っている
  • 今回依頼する開発内容の類似実績がある
  • 実際に話してみて性格が合う

3-3.勤続年数5年以上の社員が半数

国外ではジョブホッパーと呼ばれ、スキルアップのために転職を繰り返す文化があり、 2~3年で辞めてしまうことがよくあります。特にミャンマーの場合、2-2の通り、優秀な人材は海外進出を目標として働く人が多いです。IT業界では5年以上の経験があるとベテランとみなされることがあり、経験とスキルの蓄積ができていることなど、様々なメリットがあります。また、会社としてしっかりとマネジメント体制が取れていることの証明にもなります。依頼した案件で人が入れ替わったりすることが少なく、効率よく品質の良い開発が望める環境であるといえます。

3-4.依頼する内容に類似する開発実績

どのような言語を使った開発実績が多いのか、得意言語やアーキテクチャを含めて確認すると良いでしょう。今回依頼する予定の類似実績を解像度高く確認することで、よりマッチするか推し量ることができます。
会社の規模が大きいからといって、実績を詳細まで確認せずに進めた結果失敗するケースは良く聞くところです。

3-5.アジャイル開発を採用

システム開発は大なり小なりの原因は様々ありますが、国内含めて開発失敗率は69%にのぼると言われています。その上、国外で行うオフショア開発はコミュニケーションロスも大きな課題となっております。そのため成功へと近づけるためにもアジャイル開発を採用しているかがポイントになってきます。小さな機能単位で開発を進めるアジャイル開発であれば、たとえコミュニケーションのロスが原因で発生したミスも早期に見つけることができ最小限の影響にとどめることが可能になります。

一般的に開発はアジャイル開発とウォーターフォール開発のいずれかの手法で進めていきます。アジャイル開発のように小さな機能単位で行うことで、突発的な仕様変更などに柔軟に対応が可能となるのに対し、ウォーターフォールのように一気通貫での作業だと、スケジュールを引くのは簡単でも管理が難しく、突然の仕様変更などの対応に多くの工数がかかってしまいます。 また、一気通貫での作業のため場合によってはイメージと違うものが完成後に発覚するなど、開発失敗につながる可能性が高いです。

オフショア開発でのアジャイル開発については以下の記事をご参照ください。

オフショアでのアジャイル開発の実情を紹介

4.代表的なミャンマーのオフショア会社5選

会社選び
3章では会社選びのポイントを紹介しましたが、ミャンマーでオフショアをやっている会社はたくさんあります。多すぎて絞り込めない方に向けて代表的な会社を5社紹介いたします。
※情報は2024年3月時点のものです

4-1.株式会社キャピタルナレッジ

日系企業との実績が多く、日本語を話すことができるスタッフを豊富に抱えているのが強みです。長期的な長く付き合いをする可能性がある人には向いていると思います。
会社名株式会社キャピタルナレッジ
設立2014年6月
従業員数120名(国内+ミャンマー)
本社所在地(国内)大阪市北区天満2-13-8
事業領域
  • ECサイトの構築
  • 業務管理システムの開発
  • SNSサービスの開発
強み日系企業とのやり取りが多く、日本語を話せる人材が豊富にいる
URLhttps://www.capital-knowledge.co.jp/

4-2.グローバルイノベーションコンサルティング株式会社

企業のDX推進に向けたシステム開発の実績が豊富です。ミャンマーのオフショア開発会社で考えたときは国内で5本の指に入る実績を持っていると思います。
会社名グローバルイノベーションコンサルティング株式会社
設立2011年4月
従業員数281名(国内+ミャンマー)
本社所在地
(国内)
東京都墨田区緑 1-21-10
BR両国2ビル 2F
事業領域
  • マイグレーション
  • POSシステム開発
  • ローコード開発
強み企業のDX推進に向けたシステム開発・導入支援の実績が豊富である
URLhttps://gicjp.com/

4-3.株式会社エイブリッジ

スマートフォンにもともと備わっている機能(GPS、ジャイロセンサー、カメラなど)を利用したスマートフォンアプリの開発を得意としている会社です。
会社名株式会社エイブリッジ
設立2012年7月
従業員数103名(国内+ミャンマー)
本社所在地
(国内)

東京都港区南青山1-21-11

事業領域
  • 得意領域 ・スマートフォンアプリの開発
  • Unityマルチプラットフォームの開発
  • AIの開発
強みGPS、ジャイロセンサー、カメラなどの機能を使ったスマートフォンアプリの開発実績が豊富である
URLhttps://abridge-co.jp/

4-4.ALJ Myanmar Company Limited

PHPの開発実績が豊富です。PHPを利用した開発を予定しているのであれば、こちらの会社に依頼すると良いでしょう。
会社名ALJ Myanmar Company Limited
設立2014年7月
従業員数160名(グループ全体)
本社所在地
(国内)
東京都新宿区新宿3-2-1
京王新宿321ビル9F
事業領域
  • Webアプリケーション開発(PHP)
強みPHPに特化したWebアプリケーションの開発実績が豊富である
URLhttps://www.aljmyanmar.com/

4-5.METATEAM株式会社

LPやコーポレートサイトといったウェブサイトの制作実績が豊富です。ウェブサイトを制作する、修繕する予定であれば、こちらの会社に依頼すると良いでしょう。
会社名METATEAM株式会社(METATEAM MYANMAR Co.,Ltd)
設立2014年2月
従業員数
573名(グループ全体)
本社所在地
(国内)
東京都港区南青山2丁目27番25号
ヒューリック南青山ビル9階
事業領域
  • ソフトウェア開発
  • Webアプリケーション開発
  • モバイルアプリケーション開発
  • ウェブサイト制作
強みLPやコーポレートサイトなどのウェブサイト制作の実績が豊富である
URLhttps://metateam.co.jp/

まとめ

オフショア開発におけるミャンマーについて紹介いたしました。

ミャンマーはオフショア開発の中でも費用を抑えることができるので魅力です。スキルの高い人材もどんどん輩出するようになり、今後はベトナムに次いで期待できる国ではないでしょうか?ミャンマーのメリット、デメリットを理解していただいた上で、今回の記事を通して国選びの1つの判断材料としていただければと思います。

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広告代理店の営業、システム開発会社の営業, 企画, PMを経て渡越。
ベトナムにてPMに従事すること10年。
自社開発事業、また、受託開発事業と2つの開発現場の運営に関わっている。
開発現場で肝要なのは「定義」「伝え方」といった管理者責任であると考えている。
そのため、オフショア開発において「言語の壁」は「表面的には存在する」と認識している一方で、開発の成否を決めるのは「管理の仕方」である点では、「日本も諸外国も変わらない」をモットーに、プロジェクトマネジメントに携わっている。
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