
あなたは今、社内の一部業務もしくは全部を外注しようと模索しているところではないでしょうか?外注の契約方法として、「請負契約」と「準委任契約」(細かくすると他にもありますが、、)があります。本記事では、それぞれの違いを解説したうえで、どちらを選択するのがベストか紹介いたします。良く混合されがちですが、「受託開発」とは、「請負契約」と同義になります。
弊社はSESを主力に、海外の人材を活用したオフショア開発拠点をベトナムにラボとして持っている会社です。SESでは準委任契約、オフショア開発では請負契約、準委任契約(ラボ型契約)をメインに取引しています。そんな会社に所属している私がこれまでの経験を生かして契約形態の違いについて解説していきます。
本記事を読んでいただき、準委任契約について少しでも理解が深まると幸甚です。
目次
1. 準委任契約について
準委任契約とは、人材×時間に対して報酬が発生する契約のことを指します。似たような契約形態で請負契約と派遣契約という契約も存在します。1章では、準委任契約をメインに、その他の契約形態との違いを比較してみます。
契約形態 | 報酬の対象 | 指示系統 | 契約期間 |
準委任契約 | 人×時間 | 受注者 | 柔軟に調整可 |
請負契約 | 成果物 | 受注者 | 契約時に決定 |
派遣契約 | 人×時間 | 発注者(派遣先) | 契約時に決定 |
1-1. 準委任契約とは
準委任契約とは、人材に対して報酬が発生することです。契約時点で何人を月に何時間稼働させるか予め決めます。基本的にはその範囲内で人材を活用し、その人材が稼働した分報酬として発生します。仮に人材がスキル不足だったとしても勤怠に問題なければ稼働したことになるので、発注者は報酬を支払う必要があります。
準委任契約で代表的な例として、システムエンジニアリングサービス(SES)やオフショア開発(ラボ型)で取り入れられていることが多いです。
1-2. 請負契約/派遣契約との違い
その他の契約形態である、請負契約(受託開発)と派遣契約について、軽く触れておきたいと思います。
契約形態 | 内容 |
請負契約 | 成果物に対して報酬が発生することです。契約時点で予め決められた内容があり、受注者はそれを達成するためにリソースを割いていくことになります。受注者の判断で達成するために人材を何人活用しても良いことになります。そこの費用も請負金額の中でやり繰りする必要があります。 |
派遣契約 | 準委任契約との違いは指揮命令権と契約期間です。準委任契約は、指揮命令権は自社にありますが、派遣契約は派遣先企業にあります。また、派遣契約は契約期間を予め決めることになりますが、準委任契約は柔軟に調整することができます。 |
例えば、eスポーツアプリを開発したい!となった時に、それぞれの契約形態でどのような違いが出てくるか見てみましょう。
契約形態 | (例) |
準委任契約 | Javaを使える人材を2名、月140時間稼働で欲しいです |
請負契約 | アプリを開発して納品するところまで責任持ってやります |
派遣契約 | アプリ開発のために人を“半年”2名弊社に派遣してください |
2. 準委任契約のメリットとデメリット
1章では準委任契約の概要を解説いたしました。2章では準委任契約のメリットとデメリットを紹介します。
2-1. 準委任契約のメリット
メリット 1:専門知識を持った人材を確保しやすい
準委任契約では、専門知識を持った人材を確保しやすい特徴があります。
例えば、IT業界だと様々な開発言語を活用することになります。1人ですべての開発言語をプロのように扱うことはまず無理でしょう。準委任契約で他社の人材やフリーランスの人に協力を依頼することで、必要な開発言語をマスターしている人材を確保するというメリットがあります。
メリット 2:“必要な期間だけ”必要なスキルの人材を確保できる
準委任契約は、期間限定で必要な人材をジョインさせることが主な目的です。そのため、特定のプロジェクトや業務に対して、必要な期間、必要なスキルの人材を確保しやすいです。また、当該プロジェクトの進捗に応じて、進捗が悪ければ増員・進捗が良ければ減らすという形で人材の増減がしやすいメリットがあります。
仮に準委任契約ではなく、社員として採用してしまうと、当該プロジェクトが終了した後のその社員の配置に苦労するかもしれません。
2-2. 準委任契約のデメリット
デメリット 1:人材が定期的に変わる
準委任契約は、1つのプロジェクトや業務を完了させるために契約するケースが多いです。そのため、当該プロジェクトや一部業務が終了したらお役御免することになります。一度そのチームが解散し、次のプロジェクトや業務がスタートする時に同じ人たちを集めるのは難しくなります。
デメリット 2:直接的な指揮命令ができない
派遣契約と異なり、発注者が直接指示することができません。あくまでも受注者が人材へ指示するので、発注者がグリップを握りづらいです。
なぜ直接指示ができないのか…準委任契約の場合、発注者と受注者で業務委託契約を締結します(労働者ではありません)。発注者と労働者は直接契約を結ぶわけではなく、労働者は受注者と雇用契約書を締結しています。そのため、発注者は雇用契約書の中身等知るよしもなく、勝手に指示してしまうと雇用契約以上の要求をする可能性があります。そのような事態を避ける意味でも発注者から労働者に直接指示することは避ける方が無難でしょう。
具体的な内容は、「請負契約と準委任契約の違い|それぞれが持つ責任や義務の違いを解説」の記事でも紹介しています。
3. 準委任契約が活かされるケース
具体的にどんなケースで準委任契約が活かされるか紹介します。今回依頼する予定のプロジェクトとマッチするか最終検討しましょう。
3-1. 開発をしながら仕様を検討するケース
最終的な成果物が見えていなく、開発を進めながら仕様を検討していく場合は、準委任契約を選択すると良いでしょう。ただし、何も作業がなくても、契約期間中は費用が発生するので、常に先々のことを考えながら開発を進めていく必要があります。
オフショアでのラボ型開発も準委任契約に該当します。
ラボ型開発の場合、契約期間中は決まった人材を様々なプロジェクトにあてがうことができます。長い付き合いになるほど団結力が高まり開発をスムーズに行うことができるでしょう。
国内での準委任契約では、プロジェクト単位が基本ですが、ラボ型開発だと人材単位で自由に活用することができるのが魅力的です。
ラボ型開発の詳細は、「ラボ型開発とは?メリット・デメリットをわかりやすく解説」の記事をご参照ください。
3-2. エンドレスに続く決められた業務を依頼するケース
ゴールが見えない決められた業務も準委任契約が向いています。ゴールが見えないので請負契約は難しいです。また、派遣契約の場合だと予め決められた契約期間中はその人材を抱えることになります。いつまで必要か不明瞭な中で派遣契約もリスクがあります。準委任契約であれば、契約期間も柔軟に調整できるので、この場合も向いていると言えるでしょう。
4. 準委任契約で契約書に必ず明記すべき内容
最後に、準委任契約を締結する際に契約書に必ず盛り込むべき内容を紹介します。契約書は先々のためにも丁寧に作成するようにしましょう。
4-1. 契約書に明記すべき内容
以下の項目において詳細に記載する必要があります。
- 業務内容:業務の具体的な内容と目的を明確化する
- 業務の遂行方法:業務の具体的な進め方や手段を明確化する
- 報酬の金額:報酬の金額を明確化する
- 支払期日:報酬の金額をいつまでに支払うか明確化する
- 禁止事項:業務遂行中の禁止事項を明確化する
- 秘密保持:秘密情報の取り扱いを明確化する ※別途、NDAを締結するケースも多い
- 知的財産の帰属:業務遂行中に生じた知的財産権の所有有無を明確化する
- 損害賠償の有無:業務遂行中に発生した損害の賠償責任を明確化する
- 契約解除の規定:契約解除の条件を明確化する
4-2. 人材の引き抜きを防ぐ
自社の社員が現場に参画して、現場で知り合った他社やクライアントに引き抜かれるケースも稀にあります。それを防ぐために事前に雇用契約書や準委任契約書において、ペナルティを設けておくと良いでしょう。業務で知り合った会社に所属した場合は~や弊社の人材を引き抜いた場合は~等の条項を設けると良いでしょう。
4-3. 偽装請負契約を避ける
準委任契約にも関わらず、自社の人材に対してクライアントがその人材に対して、指揮命令するケースがあります。これまで散々出てきましたが、このような行為は違法となっています。これを避けるためにも業務遂行方法や報告義務、料金発生の対象、精算方法などを契約書の中に盛り込んでおくと良いでしょう。
「準委任契約」まとめ
準委任契約について、請負契約/派遣契約との違い、準委任契約の概要からメリット・デメリット、契約書に盛り込むべき内容について紹介してきました。弊社で取り組んでいるオフショア開発も準委任契約(ラボ型契約)で結ぶことが多いです。
弊社は会社を立ち上げてから25年が経ちます。オフショア開発、ニアショア開発、常駐型と様々な形で体制構築できることが強みです。システム開発で行き詰った時には、どんな些細なことでも、お気軽にお問い合わせいただければと存じます。相談は無料です!