ブリッジSEという言葉を聞いたことあるでしょうか?オフショア開発の導入を検討している方にとって、聞き馴染みがある言葉かと思います。そう、オフショア開発を進める上では、ブリッジSEは必要不可欠な存在なのです。ブリッジSEによって、そのプロジェクトの運命が決まると言っても過言ではないでしょう。企業によってはブリッジSEを立てない企業もありますが、ブリッジSEがいることのメリットは壮大です。
弊社では10年以上ベトナムでのオフショア開発を行っており、これまで様々なプロジェクトに関わらせていただきました。もちろん優れたブリッジSEを抱えており、ベトナム現地にも日本人がブリッジSEとして駐在しております。本記事では、弊社の経験を含めて、ブリッジSEのタスクや必要性についてお話します。オフショア開発の依頼先を検討するにあたり、少しでもお役に立てれば幸いです。
目次
1.オフショア開発におけるブリッジSEの役割とは?
まず、ブリッジSEとは、海外拠点での開発を行うにあたりIT業界で誕生した役割です。オフショア開発でのブリッジSEの役割は、クライアントと現地SEとの橋渡し役(ブリッジ)となることです。海外に駐在するエンジニアが担当することもあれば、日本国内のエンジニアが担当することもあります。どの場所からブリッジSEとしての役割を担うことになるにせよ、プロジェクトのリーダーとなっていかにプロジェクトを円滑に進めることができるか重要なポジションになります。
海外スタッフを率いて開発を行うため、ブリッジSEのマネジメント力がプロジェクトの成功の鍵を握ります。
上記の図のように、パイプ役となって業務にあたるため、開発スキルに加え、コミュニケーション能力も大切な能力の一つです。例えば、同じことを同じようにAさんとBさんに伝えたが、それぞれ違う受け取られ方をしたという経験はありませんか?プロジェクトにおいても同じです。エンジニアが異なる作業をしてしまえば、プロジェクトは失敗します。ブリッジSEが取りまとめて開発を進めるため、プロジェクトの成否をブリッジSEが握っていると言っても過言ではありません。誰にも同じように等しく理解してもらえるよう、開発をスムーズに進行していく必要があります。
1-1. ブリッジSEとSEの違い
ブリッジSEとSEの大きな違いは、マネジメント業務があるかないかです。SEは開発作業を担当しますが、ブリッジSEは開発作業よりも、要件を取りまとめてプロジェクトを進行することが主な業務です。
開発する作業だけを見れば、プロジェクトにはSEだけでも良いのではないかと思われるかもしれませんが、オフショア開発にはブリッジSEは必要不可欠な存在であり重要なポジションになります。まずは、ブリッジSEのタスクについてご説明します。
1-2. ブリッジSEのタスク
1-2-1 プロジェクト設計の把握
日本から作業依頼が届いたら、まずは5W1Hを把握し、何をいつまでに、どのように、どうしたいのかということを細かく確認。受注経緯といった背景も、プロジェクト設計の理解や追加提案につながるために把握します。そして、内容を正しく理解し海外スタッフに伝達。
弊社では、このフェーズを最も大切にしています。なぜなら、プロジェクトを開始するにあたり、受注経緯も含めて詳細に説明することで、チームメンバー全員で同じ方向を向いて開発することができるからです。この伝達によって、時にはメンバーからより良い方法として追加提案が上がってくることもあります。
1-2-2 プロジェクトの進行
要件定義書や設計書がある場合は、読み込んだ上で翻訳して業務担当を割り振ります。要件定義書や設計書が無い場合には、要件を定義するところから、担当するケースもあります。
要件が整理できたら、作業内容を具体化し、海外側で工数計算を行います。工数をもとに、スケジュール作成し、クライアントに確認・承認を得たら、海外スタッフに業務担当を割り振ります。
進行にあたっては、海外スタッフに対しては作業進捗のとりまとめおよび確認を行い、クライアント側には進捗を報告し、オンタイムで円滑に進められるように進捗状況を管理する必要があります。
進捗を全体的に俯瞰でみられる立場の役割が存在することで、遅れが出ている場合のフォローや、問題点なども浮き彫りにできます。
弊社では、各スタッフの進捗を可視化するために進捗管理ツールを使用し、遅れが出た場合の対応やフォローにまわるなど、リスク回避に努めています。チケット単位で誰がどのコード部分を担当したのかといった細かなタスクまで可視化しているため、ミスにも気づきやすくし、大きなトラブルの回避につなげています。
1-2-3 クオリティチェック
成果物のクオリティチェックも、ブリッジSEの大切な作業の一つです。海外で開発したモノを、日本品質で保てるかどうかは、ブリッジSEの働きに関わってきます。
確認にあたっては、チェックシート等を作成・活用し、まずは作業者によるチェックを経て、ブリッジSEにてダブルでクオリティチェックを行います。
理由としては、海外では作業者がチェックしないまま成果物が出てくることも普通にあるため、ブリッジSEも確認を行うことにより、要件に漏れがないか、期待した成果物に仕上がっているかどうかを判断したいからです。
弊社では、日本人ブリッジSEが在籍しているため、納品物として日本目線でも漏れがないかどうかをチェックしています。
1-2-4 プロジェクトのトラブル対策
日本であれば日本人自体が、次回このミスを繰り返さないために自ら考えて行動し、同じミスは発生しませんが、海外においては勝手が違います。
オフショア開発においては、誰かがミス管理をしなければ、同じミスが繰り返し発生するケースがあります。どのようなミスが、なぜ起こったのかをチーム全体で報告して、現場スタッフ内で改善案を考えてもらう場を設けるファシリテーターとしての役割もブリッジSEの大切な仕事です。
1-2-5 定例ミーティングの実施
クライアントとの定例ミーティングを実施し、開発の進捗報告や追加要望や認識齟齬がないか等を確認するのもブリッジSEの役割です。時には、追加提案も行います。
それとは別に、毎週開発チームでも定例ミーティングを行っている企業は多いはずです。チーム内でプロジェクトを横断した情報共有などを通じて、スキルアップやモチベーション管理をするなど、マネジメントを行っています。
弊社では日本人技術者から外国人技術者への定期的な技術指導を始め、技術セミナーへの参加促進やワークショップの実施など、新たな知識獲得のためのフォローを行うことでモチベーションアップに努めています。
2.オフショア開発におけるブリッジSEの必要性
ここまでで、ブリッジSEはエンジニアとしてだけでなく、マネジメント業務が入ってくるため、幅広いスキルが必要になることがお分かりいただけたかと思います。
そんなブリッジSEは、オフショア開発において、今度どのような状況におかれるか、データ予測などをもとに、必要性を考察します。
2-1. 増えるオフショア開発の市場規模
近年は、海外での開発すなわちオフショア開発の市場規模が拡大を続けています。
これまで、オフショア開発は人件費のコスト削減のための海外活用というイメージでしたが、近年ではDX化の推進により、あらゆる分野でデジタル化が進み、IT人材不足解消のための一つの方法として、オフショア開発が増えています。
矢野経済研究所の「グローバルアウトソーシング市場に関する調査結果2016」によると、以下のことがわかります。
- 日本国内向けのオフショアサービス市場の規模は2019年16.78億ドルと予測
- 2014年度~2019年度において年平均で3.6%成長
- 2019年以降も同程度の成長が続いたと仮定した場合、日本国内向けのオフショアサービス市場の規模は、2023年に約19.3億ドルと試算
2023年のオフショア開発の市場規模はおおよそ2,700億円(2023年6月レート:1ドル=140円)という予測になります。
また、オフショア開発白書(2023年版)によれば、58.8%の企業が今後のオフショア開発について、「オフショア開発を拡大していく」と回答し、残りの41.2%も「現状維持」と回答しており、今後「縮小していく」と回答した企業は無かったことから、さらなる拡大が予測されます。
2-2. 増えるブリッジSEの需要
オフショア開発の市場規模の拡大に伴い、近年はブリッジSEの需要が高まっています。
日本国内では少子高齢化が進み、労働人口が減少し、日本におけるエンジニアの人材不足は続いています。
みずほ情報総研株式会社が発表した「IT人材需給に関する調査」では、IT需要の伸びを「低位」、「中位」、「高位」三段階のシナリオで想定していますが、需要の伸びが少ない、下記のグラフの低位のシナリオの場合でも2030年にはIT人材不足の規模は45万人ほどになる予測となっており、将来的にもIT人材不足が深刻化していることがわかります。
引用:経済産業省委託事業-IT人材需給に関する調査–調査報告書 P.23 (https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf)
今後の情勢によっては、需要の変化やその他の新しい手法の発見などにより、予測が変動する可能性はありますが、現状の見通しでは、IT需要は今後も高まる可能性が高く、少子化の日本では人材自体が不足しており、今後は市場や人材を海外へと目を向ける必要があることから、ブリッジSEへの需要は自然と高まると考えられます。
2-3. 広がるブリッジSEの活躍の場
ブリッジSEは、日本拠点から海外とやり取りをするケースもありますが、海外拠点に常駐しながら海外スタッフとやり取りをするケースのほうがスタンダードです。
以前はオフショア開発先といえば、中国が多かった印象でしたが、2023年のランキングデータでは中国やベトナムだけでなく、フィリピンの割合やインドなども増えており、オフショア先の選択肢も増えています。今後も、世界情勢によっては、国の選択肢が増える可能性があり、ブリッジSEの活躍の場も広がる可能性が考えられます。
3.優秀なブリッジSEを見定める5つのポイント
ここまでの章で、ブリッジSEのタスクや、今後も引き続き需要は拡大するという予測をお伝えしてきました。では、実際に優秀なブリッジSEの確認ポイントはどこなのか…この章では5つのポイントをご紹介します。
3-1. 海外スタッフとのやり取りに必要な語学力
海外のエンジニアと関わる役割のため、ブリッジSEが基本的な語学力を身につけているかどうかを確認しましょう。
現状、オフショア先として多いのは、べトナム・フィリピン・インドとなっており、英語や現地の言葉を使ったコミュニケーションが求められます。また、要件定義書の翻訳などの業務がある場合も想定して、IT系の単語も覚えているはずです。
しかし、ベトナムのような親日国であれば、既にベトナム側に日本語が堪能なスタッフがいることが多いため、日本語でやり取りするケースもあります。弊社もベトナムに開発拠点がありますが、日本語が堪能なベトナム人スタッフがいるため、日本語でのやり取りも行っています。
3-2. 文化の差を埋めるコミュニケーションスキル
ブリッジSEは日本側と海外側と、一番多くの人やり取りをする役割です。調整や説明や指示などを、人の間に立ってやり取りするため、その国の文化や国民性を理解した上で、最適なコミュニケーションを図る必要があります。日本では当たり前のことでも、海外では当たり前ではないことがあります。その差を埋めるのがコミュニケーションスキルです。日本では当たり前のことを、コミュニケーションを取って、海外スタッフにも当たり前と思われるように裏側で動いているのがブリッジSEです。
例えば、日本では報連相は当たり前ですが、海外では、そうとは限りません。報連相を当たり前にしているチームと、そうでないチームは、チーム自体の連携の強さも、成果物の品質も差が出ることは想像しやすのではないでしょうか。コミュニケーションを密にとって、より良いチームづくりを目指すブリッジSEがいるチームは、品質も優秀です。
弊社でも、定期なミーティングはもちろんのこと、ランチタイムを共に過ごすことや親睦会の開催、社員旅行の実施など、コミュニケーションを大切にしたチーム作りを行っています。
3-3. 海外スタッフを取りまとめるマネジメントスキル
ブリッジSEの仕事内容の中でもお伝えしましたが、マネジメント内容としては、プロジェクトの進行管理や、トラブル発生時のスケジュール調整、タスクの割り振りやクオリティチェック、そして、開発スタッフの モチベーション管理など、多岐にわたります。
発注にあたって、その企業のブリッジSEはトラブル発生時にはどう対応しているのか、モチベーション管理をどうしているのなどを確認するのもポイントです。
弊社ではトラブル回避のために、ワークフローに沿った作業工程で作業を行うなど、工夫をしています。また、スタッフとの面談も定期的に行っており、現状の仕事内容についての考えをヒアリングするだけでなく、各スタッフの描くキャリアプランも含めて相談にのるなど、将来を見据えたマネジメントを心がけています。
3-4. ブリッジSEとしての実務経験
他の職種にも言えることではありますが、ブリッジSEとしての実務経験も確認ポイントです。初めてプロジェクトを担当するブリッジSEよりも、様々な苦難や困難を克服してきたブリッジSEがいる方が、発注側としても心強いはずです。
また、発注側が期待しているのは、“海外の人件費による開発コストの削減×日本品質”のはずです。
実務経験豊富なブリッジSEは、経験を通じて、海外スタッフが抜け漏れるようなタスクやリスクを拾い上げ、日本品質を保つことに長けています。こういった、先を見越した日本人ならではのホスピタリティを発揮し、存在感をしめすブリッジSEが存在するチームは、発注側と開発側との相互理解も進んでいます。
3-5. 正確に伝達するための技術的知識
プロジェクトの依頼概要を伝えて、すぐに理解できるかどうかも、確認ポイントです。ブリッジSEは、指示を出すために開発の流れや、技術的な基礎知識を身につけています。自分自身は実際に開発作業を担当しない場合でも、スタッフに割り振る作業概要は理解しています。なぜなら、把握できなければ、追加提案もできなければ、工数の換算や、リスクなどを想定することができないからです。そして、それはスタッフに作業内容を正確に伝達できないことにもつながります。また、技術的知識が乏しい場合は、海外スタッフからの信頼も得にくい状況を引き起こします。弊社の経験からみても、海外スタッフからの信頼の厚いブリッジSEかどうかは、技術的知識の深さからも感じることができます。
4.優秀なブリッジSEがいる企業~5つの見極めポイント
最後に、オフショア開発の成功のカギを握る、優秀なブリッジSEがいる企業の5つの見極めポイントをお伝えします。参考になれば幸いです。
4-1. オフショア開発の実績が存続または増加しているか
まずは、オフショア開発自体が縮小傾向の企業よりも、存続または増加している企業を選びましょう。
存続または増加している企業であれば、ブリッジSEが問題なく稼働していることがわかります。
縮小傾向の場合は、今後オフショア開発拠点が閉鎖となるケースも少なからず考えられます。発注後に閉鎖となった場合、開発途中で別の会社に開発を依頼せざるを得ないケースも発生するため、引継ぎタスクが発生し、労力がかかってしまいます。
4-2. ブリッジSEの平均在籍年数
多くの企業は、エンジニア在籍年数3年以内が6割近く占めています。また、約4人に1人のエンジニアが、入社してから3年を目処に転職を検討しているというデータもあります。在籍年数が長いチームほど、結束力や品質も良いはずです。3年あたりを基準にご検討ください。
なお、経験が3年未満でもベテランブリッジSEがフォローやサポートについていることもありますので、併せてご確認ください。
弊社の場合は、開発拠点のベトナム自体が国民の平均年齢が31歳という若い国のため、一概に在籍年数を語れないのですが、3年以下のスタッフが46%、4年以上のスタッフが54%という内訳になっています。もちろん、在籍年数が短いスタッフには、ベテランスタッフがサポートについています。
(引用:レバテックキャリア)
4-3. 海外スタッフの平均在籍年数
(左:弊社 右:ベトナム全体)
国にもよりますが、エンジニアスタッフの在籍年数も確認しましょう。こちらも国によってばらつきはありますが、3年を目安にご検討ください。
なお、弊社の開発拠点であるベトナムでは、前章でも触れたましたが、国民の平均年齢が31歳という若い国のため、一概に在籍年数を語れないのですが、エンジニアの経験年数が3年以下のITエンジニアが約53%、経験年数4-5年が17%程度、6年以上が30%程度というデータがあります。
(引用:セカイハブ)
なお、弊社の場合、ベトナム拠点のエンジニアスタッフは、技術年数4年以上のベテランスタッフが約8割を占めています。
4-4. 開発チームの体制が具体化されているか
発注前に確認したい場合は、例えば他社実績ではどんな体制がしかれていたのかを、参考までに確認されると安心材料になります。
4-5. 開発チームでのミーティング実施頻度や議題内容
開発チーム内でもミーティングを実施しているか確認しましょう。定期的にミーティングを行っているチームほど、成果物のクオリティも高いと、弊社では実感しています。月に1度でも行われているかどうか、そして議題内容はチーム力向上に役立ちそうな内容なのかを確認しましょう。
なお、発注側との定例ミーティングは、プロジェクトの大きさや内容によって実施するかどうかや、頻度が決まるため、気になる方はご相談されることをお勧めします。
5.まとめ
ブリッジSEはプロジェクトの成功のカギを握る、大切な要となる存在です。伸び続けるIT需要に応えるためにオフショア開発が増えていく中で、ブリッジSEという存在は、ますます重要性を増していくと考えられます。
弊社のブリッジSEも、複雑さを増すプロジェクトに対応すべく日々成長しております。いちIT企業として、みなさまがお困りのことを解決できるよう体制は整えております。
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