元請けと下請けの違いはご存知でしょうか。
様々な業界でこの言葉を聞く機会があるかと思いますが、どの業界でも意味は同じであり、気を付けるポイントもほぼ同様です。
今回はITの場合として執筆をしております。
特にSESといった多重下請け構造になりがちなIT業界の特徴も踏まえてまとめております。
下記も併せてご参照ください。
IT企業として20年以上の実績を持つ弊社の蓄積データを活用しながら解説をしております。
ぜひお読みいただき、参考にしていただければ幸いです。
目次
1.元請けと下請けの違い
元請けはエンドとなる依頼者から直接仕事引き受ける企業であり、下請けは元請け企業から仕事を受ける企業です。
この2つが存在する理由は持ちつ持たれつの関係があるからです。
元請けとなると受けた仕事を全て正しく納品する必要がありますが、中には専門性が高く自社内に知識が無いため質の担保ができない仕事も含まれているケースもあります。
そんな時に専門性がある下請け企業に一部分の仕事を任せることで、質を維持したまま、仕事全体を完成させることができます。
また、下請け企業は元請け企業になるほどの人的リソースや資金がなく、全ての仕事を完成させることが困難であるために元請け企業とならずに、専門性が高い下請け企業として下支えしております。
例えば、WEBサイトの作成を元請け企業が受けたとしましょう。
その元請け企業はエンジニアが多数おり、サイト構築はお手の物ですが、デザイン面に不安を抱えております。
注文主はファッション系の企業であり、デザイン面でも高い質を求めております。
そこで、デザインに強みを持つ下請け企業に一部分を依頼することで、全体的な質を底上げすることができました。
このような関係性があるため、互いに持ちつ持たれつとなっております。
そんな元請けと下請けについての違いを詳しく解説していきます。
1-1 注文主から直接仕事を受けているかいないか
元請けと下請けとではそもそも仕事を受けるポジションが違います。
仕事の依頼者(注文主)、いわゆるエンド企業から直接仕事を受けているのが元請けとなります。
エンド企業から直接仕事を受ける場合は全て元請けとなり下請けに分類されません。
一方で下請けは元請けから仕事を受けることを指します。
元請けから仕事を受ける場合は元請けに分類されません。
このように、元請けと下請けは仕事を受ける先が異なります。
ここが最大の違いとなります。
1-2 案件の全体統括の有無
元請けと下請けは仕事内容も異なります。
元請けは注文主から直接仕事を受けるため、全てを完成させて注文主に納品する必要があります。
そのため、仕事全体の統括も必須となり、完成に向けて進めていく必要があります。
一方、下請けは元請けが受けた仕事の一部分を受けるケースが大半です。
そのため、任された仕事のみを遂行することが求められ、正しく納品することで仕事が完了します。元請けと異なり、仕事全体の統括は不要になります。
元請け | 下請け |
---|---|
顧客から仕事を受ける | 元請けから仕事を受ける |
全体統括有り | 全体統括無し |
利益が最も高い | 利益が元請けよりも少ない |
立場が強い | 立場が弱い |
2. 元請けとは
元請けについて解説していきます。
2-1 注文主となる顧客から直接仕事を引き受けた会社
元請けとは注文主となる顧客から直接仕事を引き受けた会社のことを指します。
IT業界おける元請は、1次請けやプライム、エンド直などと表現することもあります。
元請けは顧客とスケジュールや案件内容、予算といった詳細を決めていきます。
最終的には顧客が望むシステムを納品し完了となります。
また、元請けは必要に応じて下請けに仕事の一部を依頼することもできます。
顧客と取り決めたスケジュールや案件内容、予算内で下請け業者を決めていきます。
2-2 メリット
得られる利益が下請けと比較して多いことや、下請けを活用して対応した大規模な案件も自社の実績としてアピールすることができます。
利益に関しては言わずもがな、顧客から直接仕事を受けるため、他社に中抜きされるような心配がないため、しっかりとした利益を得ることができます。
また、自社で対応できない部分は下請けを活用し、最終的に自社で納品することで実績として残すことができます。
顧客が元請け会社を選択する際に、過去実績を決め手の1つとすることも多いことから、次の仕事につながる可能性を高めることができます。
2-3 デメリット
仕事の全体を納品する必要があるため、責任範囲が広いことがデメリットになります。
例えば任せていた下請け企業も納品が遅れたことで、注文主への納品が遅れたとしても、責任を負う必要があります。
そのため、下請けを活用するにしても細心の注意を払いつつ、納品のスケジュールを綿密に決めておくなど、完成に向けて万全を期すことが重要になります。
3. 下請けとは
下請けについて解説していきます。
3-1 注文主となる顧客から直接仕事を引き受けた会社から仕事の一部を引き受けた会社
前述している通り、元請けから仕事を受けるのが下請けとなります。
そのため、2次請けとも呼ばれることがあります。
基本的に元請けから依頼された仕事を完了させ、納品することが求められます。
内容によっては、労働力を提供するケースがあり、SESなどがあげられます。
3-2 メリット
仕事全体の統括が無いため、問われる責任は任された部分のみであり、管理工数が元請けと比較し少なくなります。
また、元請け企業のパートナー会社となることで、営業活動を積極的にしなくとも仕事がもらえることもメリットです。
3-3 デメリット
元請け企業に対しての立場が弱いことや利益が少なくなるデメリットがあります。
元請け企業は注文主から直接仕事を受けるため、利益を最も得ることができます。
しかし、下請けは元請けを挟むため、利益が少なるリスクがあります。
4.元請け下請けの注意点
元請けと下請けの関係は業務の効率を上げるために必要になることも多いと思います。
しかし、注意すべき点が分からないといつの間にか法律違反になっているケースもあるため、しっかりと確認しましょう。
4-1 下請法違反にならないため注意すること
元請けと下請けの関係は前述の通り、持ちつ持たれつの関係ではありますが、下請けの立場が弱くなる傾向にあります。
そんな下請け側を守る法律があり、違反した場合には元請け企業に罰則が科せられます。
元請け企業が守るべきこととして、下記の4つの義務と11の禁止事項があり遵守することが求められます。
※表中の親事業者は元請けです。
◇親事業者の義務
親事業者の義務 | 概 要 |
---|---|
| 発注に際して所定の具体的な必要記載事項をすべて 記載している書面を直ちに下請事業者に交付する義 務がある |
| 成果物を受領した日から起算して 60 日以内で、できる限り短い期間内に支払期日を定める義務がある |
| 下請取引の具体的内容等を記載した書類を作成し、2 年間保存する義務がある |
| 代金を支払期日まで支払わない場合は、受領日から起算して60日を経過した日から実際の支払日までの日数に応じ、当該未払金額に年率14.6%を乗じた額の遅 延利息を支払う義務がある |
◇親事業者の禁止事項
親事業者の禁止事項 | 概 要 |
---|---|
| 注文した物品等の受領を拒むことをしてはならない |
| 物品等の受領日後 60 日以内に定めた支払期日までに 下請代金を全額支払わなければならない |
| あらかじめ定めた下請代金を減額してはならない |
| 受け取った物を返品してはならない |
| 類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い下請代 金を不当に定めることをしてはならない |
| 親事業者が指定する物や役務を強制的に購入・利用さ せることをしてはならない |
| 違反行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせ たことを理由に、取引停止等の不利益な取扱いをして はならない |
| 有償支給した原材料等の対価を、当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日よりも早い時期に相殺したり支払わせることをしてはならない |
| 一般の金融機関で割引を受けることが困難であると 認められる手形を交付してはならない |
| 下請事業者から金銭、労務の提供等をさせることをしてはならない |
| 費用を負担せずに注文内容を変更し、又は受領後にやり直しをさせることをしてはならない |
情報サービス・ソフトウェア産業における下請適正取引等の推進のためのガイドライン
「https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/guideline/06_info-services_soft.pdf」
4-2 多重下請け構造に注意
多重下請け構造とは元請けから下請け(2次請け)へさらにその下請け(3次請け)へといくつもの下請け企業が何層にもわたり再委託されていく状況のことを指します。
開発言語の多様性、専門性、リソース不足など様々な要因により、下記のような多重下請け構造がIT業界で発生しています。
注意点としては下請けが増えれば増えるほど、責任の所在が不透明になる、多数の者を介在するため情報伝達にミスが起こりがち、最下層に進むにつれて金額が低く労働環境の悪化の懸念があります。
そのため、これらのリスクを軽減するためにも2次請けまたは3次請け程度までにしておくことをおすすめします。
元請け下請けのまとめ
元請けと下請けについて解説してきましたが、元請けは直接仕事を受ける、下請けは元請けから仕事を受ける、改めてこのポイントは押さえておいてください。
IT業界に限らず、建設業界なども元請けと下請けが存在していますが、構造をしっかりと理解しておくことが重要です。
お読みいただいた皆様の参考にしていただければ幸いです。