
デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、企業成長を加速させる人物こそ、DX人材と呼ばれる人たちです。
本記事では、そんなDX人材の定義から、必要なスキル、育成方法、採用戦略まで、DX人材に関して網羅的に解説します。企業のDX推進を成功させるためにはDX人材の能力で左右されると言っても過言ではないでしょう。
弊社はシステム開発会社です。まさに様々な企業のDXの導入支援をしている会社であり、会社を立ち上げてから約25年経つこれまでの経験から本記事を通してDX人材について、語っていきたいと思います。
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目次
1.DX人材の定義と企業における重要性
1章ではDX人材の定義と、DX人材が企業にとってどれだけ重要か解説していきます。
1-1.DX人材とは何か?
DX人材は、デジタル技術を活用してビジネスモデルを変革し、新たな価値を創造できる人材のことを指しています。
企業がDXを推進し、競争優位性を確立するために不可欠な存在となっています。デジタル技術の進化は目覚ましく、企業は常に最新のテクノロジーを取り入れ、仕事・業務を常に最適化する必要があります。その中心となるのがDX人材であり、彼らの知識とスキルがDX推進の運命を左右すると言っても過言ではありません。
DX人材は、単に技術を理解するだけでなく、ビジネスの課題を解決するために、技術をどのように活用できるかを理解している必要があります。企業としては、DX人材の育成と獲得に積極的に投資し、最大限に能力を発揮できる環境を整備することが重要です。
大げさに聞こえるかもしれませんが、DX人材は企業の変革をリードし、新たな成長の機会を創出する原動力となるような存在でいないといけません。
1-2.企業におけるDX人材の役割
DX人材は、戦略立案から実行まで、DXのあらゆる段階で重要な役割を果たします。ビジネスとテクノロジーの両面を理解し、組織を横断して連携を促進することで、DXを成功に導く人です。
具体的には、市場の動向を分析し、顧客のニーズを把握することで、新たなビジネスモデルを設計します。また、最新のテクノロジーを活用して、既存の業務プロセスを改善し、効率化を図ります。組織全体のデジタルリテラシーを高め、DXを推進するための文化を醸成する必要があります。
各部門の担当者と連携し、それぞれの知識やスキルを結集することで、より効果的なDX戦略を実行します。組織の壁を越えて情報を共有し、協力することで、全体最適の視点からDXを推進します。したがって、企業はDX人材がリーダーシップを発揮し、組織全体を巻き込むことができるような環境を整備する必要があります。
DX推進はDX人材だけでできるものではありません。DX人材はあくまでDX推進を会社全体に広める存在であり、実行するには全社員の協力が不可欠です。
1-3.DX推進スキル標準(DSS-P)とは
経済産業省が提唱するDX推進スキル標準(DSS-P)というものが存在します。このDSS-Pは、DX人材育成の指針になるので、覚えておいて損はないでしょう。
ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティスト、エンジニアなど、様々な立場の人がそれぞれの専門知識・スキルを活かしてみんなで一緒にDX推進の課題解決を目指していくというものです。
■役割表
ビジネスアーキテクト | ビジネスや業務の変革を通じて実現したいことを設定し、関係者間のコーディネートする。 |
デザイナー | 顧客・ユーザー視点で製品・サービスの方針や開発のプロセスを策定する。 |
エンジニア | デジタル技術を活用した製品・サービスを提供するためのシステム等の設計・実装・運用する。 |
セキュリティ | デジタル環境におけるサイバーセキュリティリスクの影響を抑制するための対策する。 |
データ分析 | データを活用した業務変革や新規ビジネスの可能性をデータ収集して解析する仕組みの設計・実装・運用する。 |
DSS-Pを参考に、自社に必要なスキルを明確化し、人材育成計画を策定することが重要です。自社のDX戦略に基づいて、必要な専門知識・スキルを特定し、適材適所で人選を調整する必要があります。DSS-Pを活用することで、従業員のスキルレベルを客観的に評価し、個々の成長目標を明確に設定することもできるでしょう。
DSS-Pの詳細はIPAのサイトをご参照ください。
(参照:IPA「DX推進スキル標準(DSS-P)概要」)
2.DX人材に求められるスキルと知識
2章ではDX人材に求められるスキルや知識が何か解説していきます。必ずしも1人が全部できる必要は有りません。会社の中でそれぞれ対応できそうな人材を配置すれば良いです。
2-1.テクニカルスキル
プログラミング、データ分析、クラウドコンピューティングなど、DXを推進するための技術的な知識とスキルは不可欠です。
- プログラミングスキル:システム開発やデータ分析において不可欠であり、Pythonなどの言語の習得を推奨
- データ分析スキル:大量のデータを解析し、ビジネス上の意思決定に役立つインサイトを抽出するために重要
- クラウドコンピューティングスキル:AWS、Azure、GCPなどのプラットフォームを活用し、スケーラブルで柔軟なITインフラを構築するために必要
これらのテクニカルスキルを習得することで、DX人材は、企業のデジタル変革を技術的な側面から支援することができます。また、常に最新の技術動向を把握し、自己学習を継続することも重要です。
2-2.ビジネススキル
市場分析、顧客理解、ビジネスモデル設計など、ビジネスに関する知識も重要です。ビジネスアーキテクトは、これらのスキルを駆使して、新たなビジネス機会を創出する人材となります。
- 市場分析スキル:競合他社の動向や市場のトレンドを把握し、自社のビジネス戦略を策定するために必要
- 顧客理解スキル:顧客のニーズや要望を深く理解し、顧客満足度を高めるための製品やサービスを開発するために必要
- ビジネスモデル設計スキル:新たなビジネスモデルを考案し、収益性を高めるために必要
これらのビジネススキルを習得することで、DX人材は、技術的な知識だけでなく、ビジネスの視点からもDXを推進することができます。また、様々な部門の担当者と連携し、ビジネス戦略と技術戦略を整合させることも重要な役割となります。
2-3.ソフトスキル
コミュニケーション能力、リーダーシップ、問題解決能力など、チームをまとめ、プロジェクトを推進するためのソフトスキルも重要です。変化に柔軟に対応し、周囲を巻き込む力も求められます。
- コミュニケーション能力:チームメンバーや関係者との円滑なコミュニケーションを図り、プロジェクトを成功に導くために必要
- リーダーシップ:チームをまとめ、目標達成に向けて牽引するために必要
- 問題解決能力:プロジェクトの過程で発生する様々な問題に対して、適切な解決策を見出すために必要
変化に柔軟に対応し、新しい状況に素早く適応することも重要です。さらに、周囲を巻き込む力は、関係者の協力を得て、プロジェクトを円滑に進めるために必要となります。
3.DX人材の育成と獲得の手段
続いて3章ではDX人材の育成と採用という面から見てみましょう。
3-1.社内育成(リスキリング)の重要性
既存社員の社内育成は、DX人材を確保するための重要な手段です。
従業員が新しいスキルを習得し、キャリアチェンジや業務範囲の拡大に対応できるようにするために必要な取り組みとなっています。DX人材の育成においては、プログラミング、データ分析、クラウドコンピューティングなどの技術的なスキルだけでなく、ビジネススキルやソフトスキルも重要になってきます。
企業は、研修プログラムの提供やOJTを通じて、社員のスキルアップを支援することが大事になってきます。自社での対応が難しい場合は外部の研修を活用するのも有りでしょう。
このような社内育成の対応がしっかりしている方が人も定着しやすく、外から見ても魅力的なものになります。優秀な人材を確保できるという面でもメリットは有るでしょう。
3-2.中途採用と外部委託の活用
即戦力となるDX人材を確保するためには、中途採用も有効な手段です。中途採用は、経験豊富なDX人材を迅速に確保するための効果的な方法です。企業は、自社のDX戦略に基づいて、必要なスキルや経験を持つ人材を明確に定義し、適切な採用活動を行う必要があります。
また、特定のスキルを持つ人材を外部委託することで、社内のリソースを補完することもできます。特定のプロジェクトや業務において、専門的な知識やスキルの補完が必要な場合は活用しましょう。
フリーランスやコンサルタントなどの外部人材を活用することで、社内のリソース不足を解消し、プロジェクトを円滑に進めることができます。人材サービスを活用することで、最適な人材を効率的に見つけることができます。中途採用と外部委託の活用は、DX人材の確保において、社内育成と並行して重要な戦略となります。
3-3.組織文化の醸成
DXを成功させるためには、組織文化の変革も必要になってきます。
失敗を恐れずに挑戦できる環境、オープンなコミュニケーションを促進する文化を醸成することが大事でしょう。組織全体が変化を恐れず、積極的に新しい技術や手法を取り入れる姿勢が重要です。失敗を許容し、そこから学びを得る文化を醸成することで、従業員の挑戦意欲を高めることができます。また、オープンなコミュニケーションを促進し、情報共有や意見交換を活発化させることで、組織全体の知識レベルを向上させることができます。
4.DX人材のキャリアパスとモチベーション
続いて4章ではDX人材のキャリアパス、会社に定着してもらうための施策を紹介します。
4-1.キャリアパスの明確化
DX人材が長期的に活躍するためには、キャリアパスを明確化することが重要です。
目標設定や評価制度を整備し、成長を支援する体制を整えましょう。キャリアパスを明確化することで、DX人材は、将来の目標を明確に持ち、モチベーションを維持することができます。企業は、DX人材のスキルや経験、キャリア目標に応じて、様々なキャリアパスを用意する必要があります。
例えば、技術的な専門性を深めるスペシャリスト、プロジェクトをマネジメントするリーダー、ビジネス戦略を立案するコンサルタントなど、多様なキャリアパスを提供することで、DX人材の成長を支援することができます。
4-2.適切な評価と報酬
DX人材の貢献を正当に評価し、適切な報酬を提供することで、モチベーションを維持できます。成果だけでなく、プロセスも評価に取り入れることが重要です。
例えば、新しい技術の習得や、チームへの貢献、困難な問題の解決など、成果に至るまでの過程も評価に取り入れることで、DX人材の努力を認め、成長を支援することができます。また、報酬だけでなく、昇進や昇格、研修参加の機会提供など、様々な形で貢献を評価することも有効です。
4-3.学習機会の提供
デジタル技術は日々進化しており、DX人材は常に最新の技術や知識を習得する必要があります。企業は、研修参加の推奨や、資格取得支援など、学習機会を積極的に提供することで、DX人材のスキルアップを支援する必要があります。
また、社内勉強会の開催や、外部講師の招へいなど、様々な形式で学習機会を提供することも有効です。最近は、オンライン学習プラットフォームの利用を推奨したり、書籍購入費用を補助したりするなど、自己学習を支援する体制を整える企業も増えてきています。
学習機会の提供は、DX人材のスキルアップだけでなく、モチベーション向上にもつながり、企業の競争力強化に貢献するでしょう。
5.DX推進の成功事例
弊社とはあまり関わりのない企業様になりますが、5章ではDX推進の成功事例を紹介します。
<デジタル人材育成に積極的に投資して成功した事例>
2020年、2023年、2024年には、経済産業省と東京証券取引所が実施する「DX銘柄」に選定され、その成果が評価されています。
主な取り組みとして、2021年度から提供を開始したクラウド型空調コントロールサービス「DK-CONNECT」が挙げられます。このサービスは業務用空調機の運用・保守を効率化し、エネルギー消費量削減や設備管理者の負担軽減を実現しています。また、2023年度からは海外市場にも展開を拡大しています。
さらに「ダイキン情報技術大学」を設立し、社内のデジタル人材を育成しています。このプログラムは、新入社員向けにプログラミングやAI技術を教え、業務改革やAI導入に貢献しています。2026年までに2,000人のデジタル人材を育成する目標を掲げています。
<生成AIの導入で年3万時間削減した事例>
主な取り組みとして、生成AIの導入があります。2023年には「NISSIN AI-chat」を導入し、営業部門での活用が進んでいます。このAIは、プロモーションアイデアの生成やプレゼン資料の作成などに役立ち、営業担当者の約7割が使用しています。これにより、年間400時間以上の工数削減を目指しており、営業活動の効率化が進んでいます。
Microsoft Azure OpenAI ServiceとPower Appsを活用し、2023年5月にわずか3週間で生成AIを社内に導入しました。営業部門でのプロンプトテンプレート作成を通じて、プロジェクトメンバーが中心となりAI活用を推進しました。その結果、営業担当者の約7割が生成AIを活用し、業務の迅速化と効率化が進んでいます。
クラウド型データウェアハウス(DWH)の導入により、複数のシステムからのデータを統合し、意思決定のスピードアップを実現しました。これにより、週次でしか確認できなかったデータが日次で参照できるようになり、データドリブン経営を加速させています。これらのDX推進により、日清食品は業務の効率化と意思決定の迅速化を実現し、競争力を強化しています。
「DX人材とは」まとめ
DX人材は、企業がDXを推進し、競争優位性を確立するための重要な資産です。本記事で解説した育成方法、獲得戦略、組織文化の醸成などを参考に、自社に最適なDX人材戦略を策定し、企業成長を加速させてみてはいかがでしょうか。
具体的には、DX人材の定義を明確化し、必要なスキルを特定することから始めましょう。次に、社内育成(リスキリング)や中途採用、外部人材の活用など、様々な手段を組み合わせ、DX人材を確保します。さらに、組織文化の変革やキャリアパスの明確化、適切な評価と報酬、学習機会の提供などを通じて、DX人材のモチベーションを高め、長期的な活躍を促します。これらの取り組みを総合的に行うことで、企業はDXを成功させ、競争優位性を確立し、持続的な成長を実現することができるのではないでしょうか。
弊社は、そんなDX推進に困っている企業様をサポートすることができます。弊社はシステム開発会社であり、お客様と一緒になってお客様の課題解決をシステムの提供という形で支援しています。また、様々な体制を組むことが強みでもあり、オフショア開発、ニアショア開発、オンサイト(常駐型)開発、受託開発など…お客様の状況に合わせてご提案いたします。相談は無料!なのでお気軽にお問い合わせください。