
マイグレーションは、企業のIT戦略において重要な要素です。本記事では、マイグレーションの基本的な内容から具体的な手法、注意点までを網羅的に解説します。システム移行を検討している方、マイグレーションについて深く理解したい方は是非お読みいただければと思います。
弊社はシステム開発会社です。まさに様々な企業のマイグレーションの支援をしている会社であり、マイグレーションすることでクライアント様の企業価値を高めることをしています。会社を立ち上げてから約25年経つこれまでの経験から本記事を通してマイグレーションについて解説していきます。
1.マイグレーションとは?概要と目的
1章ではそもそもマイグレーションとは何なのか解説していきます。
1-1.マイグレーションの定義とビジネスにおける重要性
マイグレーションとは、既存のシステム/データ/アプリケーションなどを新しい環境へ移行するプロセスを指します。これは単なる技術的な移転作業ではなく、企業の成長戦略を支える重要な取り組みとなります。老朽化したシステムの刷新、クラウド環境への移行、ビジネスニーズへの適応など…その目的は様々あるでしょう。
ビジネスにおいては競争力強化、コスト削減、セキュリティ向上といった効果が期待されており、企業の持続的な発展に不可欠な要素となります。戦略的なマイグレーションを進めることでビジネスの俊敏性を高め、変化に迅速に対応できる体制を構築することができます。マイグレーションは技術的な側面だけでなく、ビジネス戦略全体を考慮して計画・実行するとより効果が期待できるのではないでしょうか。
1-2.マイグレーションが必要となる背景
では、なぜマイグレーションを企業が取り組まないといけないのか見てみましょう。
以下のような背景が考えられます。
- 技術革新の加速:既存システムが陳腐化する速度を速め、新しい技術に対応する
- ビジネス環境の変化:顧客ニーズの多様化や競争激化を招き、システムに柔軟性と拡張性を持たせる
- 法規制の変更:システムを法令遵守に対応させる
これらの変化に対応するため、企業はシステムを常に最新の状態に保って今の時代にあったシステムを保持しておく必要があります。
1-3.マイグレーションの種類と適用例
マイグレーションには、様々な種類が存在します。ここでは、それぞれの目的と手法を紹介します。自社に照らし合わせたときにどの手法が良いか検討してみましょう。
- レガシーマイグレーション:老朽化した基幹システムを刷新し、最新技術へ移行する
- アプリケーションマイグレーション:特定のアプリケーションを新しいプラットフォームや環境へ移行する
- データベースマイグレーション:データベースのバージョンアップや異なるデータベースシステムへの移行する
例えば、レガシーシステムを刷新する場合にはレガシーマイグレーション、データベースを最新版に移行する場合にはデータベースマイグレーションが適しているということになります。
※レガシーシステムの詳細は、「 レガシーシステムとは?使い続けることで受ける5つの影響 」の記事をご参照ください。
1-4.モダナイゼーションとの違い
マイグレーションと良く比較されるのが「モダナイゼーション」です。マイグレーションは、「既存システムを新たなシステムに置き換えること」ですが、モダナイゼーションは、「既存システムを今の時代のニーズに合わせて変更し、ビジネスに繋げること」です。なので、マイグレーションの方が少しライトのように聞こえるかもしれません。
※モダナイゼーションについては、「 モダナイゼーションとは?老朽化したIT資産をDXに繋げよう 」の記事をご参照ください。
2.マイグレーションの手法とは?最適な手法を選択
2章では様々あるマイグレーションの手法を紹介していきます。自社に置き換えたときにどれが最適か検討してみましょう。
2-1.代表的なマイグレーション手法の比較
マイグレーションを実施するにあたり、最適な手法を選択することが重要です。代表的な手法としては、リホスト、リライト、リビルド、リファクタリングがあります。それぞれについてもう少し見てみましょう。
- リホスト:既存のシステムをそのまま新しい環境に移行する手法で、最も迅速かつ低コストでリスクも低い
- リライト:プログラム言語を書き換えることで、システムの機能や性能を向上できるが、コードを全て捨てるのでリスクがある
- リビルド:システムを完全に再構築する手法であり、最も時間とコストが掛かるが確実に最新技術を導入でき、根本的な改善に役立つ
- リファクタリング:既存システムの内部構造を改善し、保守性や拡張性を高めることができ、継続的に改善できる
それぞれについて簡単に比較表を作りました。
項目 | リホスト | リファクタリング | リライト | リビルド |
---|---|---|---|---|
概要 | アプリを最小限の変更で新しい環境に移行する | 内部構造を改善しつつ外部仕様は変更しない | 既存のコードを捨てて一から書き直す | 要件定義から再設計・再開発する |
主な目的 | インフラの近代化、運用コスト削減 | 保守性・可読性・性能の向上 | 技術的負債の解消、拡張性の確保 | 最新技術に合わせた再構築 |
対象 | 主にインフラ・デプロイ環境 | コード内部構造 | コード全体 | システム全体 |
影響範囲 | 小〜中 | 小〜中 | 大 | 非常に大きい |
コスト | 低 | 中 | 高 | 非常に高い |
メリット | 低コスト・短期間で移行可能 | 既存機能を維持しつつ品質改善可能 | 技術的負債を一掃できる | 根本的な課題解決が可能 |
デメリット | アプリ構造の課題は残る | 効果が限定的な場合がある | コスト・リスクが高い | 非常に高コスト・高リスク |
導入タイミング | クラウド移行や老朽化サーバ置き換え時 | 小規模改善や段階的な改修時 | 技術的負債が深刻で手直しが困難な時 | ビジネス要件や技術が大幅に変化した時 |
2-2.クラウドマイグレーションの選択肢
クラウドマイグレーションは、オンプレミス環境からクラウド環境へシステムを移行する手法です。クラウドに変更することで、柔軟性、拡張性、コスト効率の向上などが期待できます。クラウドマイグレーションには、様々な選択肢があるので紹介していきます。
- IaaS(Infrastructureas a Service):仮想サーバーやストレージなどのインフラをクラウド上で利用する形態
- PaaS(Platform as aService):アプリケーション開発に必要なプラットフォームをクラウド上で利用する形態
- SaaS(Software as aService):ソフトウェアをクラウド上で利用する形態
それぞれについて簡単に比較表を作りました。
項目 | IaaS | PaaS | SaaS |
---|---|---|---|
提供内容 | 仮想マシン、ストレージ、ネットワーク等のインフラ | 開発・実行プラットフォーム(OS、ミドルウェア、DB等) | 完成されたアプリケーションソフトウェア |
ユーザーの責任範囲 | OSの管理、ミドルウェア、アプリケーションの実装・運用 | アプリケーション開発と運用 | 利用のみ(設定や一部カスタマイズ) |
管理対象の柔軟性 | 高い(カスタマイズ自由) | 中程度(開発に集中できる) | 低い(ベンダー任せ) |
導入のしやすさ | △(技術的知識が必要) | ○(開発環境が整っている) | ◎(すぐ使える) |
主な利用者 | インフラ担当者、DevOpsエンジニア | アプリ開発者、Web開発チーム | 一般ユーザー、業務部門 |
代表例 | AWS EC2、Microsoft Azure VM、Google Compute Engine | AWS Elastic Beanstalk、Google App Engine、Heroku | Google Workspace、Salesforce、Dropbox |
メリット | 柔軟な構成が可能、既存システムの移行に適す | 開発効率向上、インフラ管理が不要 | 導入が簡単、保守不要、スケーラブル |
デメリット | 運用負荷が高い、設定が複雑 | ベンダーロックインの可能性 | カスタマイズ制限、データ依存リスク |
Amazon Web Services (AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)など、様々なクラウドサービスが提供されているので自社のニーズに最適なプラットフォームを選択することが重要です。と言っても何が違うのか良く分からない方もいると思うのでプラットフォームについても比較してみましょう。
項目 | AWS | Microsoft Azure | Google Cloud Platform |
---|---|---|---|
運営会社 | Amazon | Microsoft | |
提供開始年 | 2006年 | 2010年 | 2011年 |
市場シェア | 最大(リーダー) | 2位(急成長) | 3位(強力な成長中) |
主な強み | サービス数と成熟度、グローバルな可用性 | Microsoft製品との親和性(Windows、Office、AD連携) | データ分析・AI・機械学習関連の強み |
代表的なサービス | EC2(仮想サーバ)、S3(ストレージ)、RDS(DB) | Azure VM、Azure Blob Storage、SQL Database | Compute Engine、Cloud Storage、BigQuery |
対応領域 | IaaS、PaaS、SaaS すべてカバー | 同上 | 同上 |
リージョン数 | 約30リージョン以上(世界最多) | 約60リージョン以上(継続拡大中) | 約40リージョン(継続拡大中) |
価格競争力 | サービスによってはやや高め | AWSと同等〜やや安価 | 価格に柔軟性あり、特にデータ処理コストに強み |
AI/ML機能 | SageMaker など(高機能・多機能) | Azure Machine Learning | Vertex AI、TensorFlow、BigQuery ML などに強み |
サポート体制 | 豊富なドキュメントとパートナーエコシステム | Microsoftサポートと統合 | 開発者向けツールに強く、オープンソース支援も豊富 |
推奨利用シーン | 柔軟で大規模なクラウド基盤が必要な企業 | Microsoft製品を多用するエンタープライズ環境 | データ分析、AI、GCPネイティブな開発環境 |
2-3.ERPマイグレーションにおける注意点
ERPシステムのマイグレーションは、企業全体の業務に影響を与えるため、慎重な計画と実行が求められます。何となくで進めてしまうと甚大な被害を受けてしまう可能性があるので気を付けましょう。
データの整合性、業務プロセスの変更、従業員のトレーニングなど…考慮すべき点は多岐にわたります。特に、データの移行は正確性と完全性が重要であり、入念な検証が必要です。業務プロセスの変更は、従業員の業務に大きな影響を与えるため、事前に十分な説明とトレーニングを行う必要があります。事前に十分な調査と準備を行い、リスクを最小限に抑えることが重要です。ERPシステムのマイグレーションは複雑なプロジェクトなので、専門的な知識と経験が必要不可欠となってきます。
3.マイグレーションを成功させるためのポイント
続いて3章ではマイグレーションを成功させるためのポイントを紹介します。
3-1.明確な目標設定と計画の重要性
マイグレーションを成功させるためには、まず明確な目標を設定することが必要ですどのような課題を解決したいのか、どのような効果を期待するのかを明確にすることで、最適なマイグレーション手法を選択して詳細な計画を立てることが可能になります。目標設定が曖昧な場合、マイグレーションの方向性が定まらず、プロジェクトが迷走してしまい最終的に失敗に終わる可能性が高まります。具体的な目標設定は、マイグレーションの運命を左右すると言っても過言ではないでしょう。
目標設定をする際は下記を必ず盛り込んで設定するように注意いたしましょう。
- 定量的(測定可能)
- 定性的(評価可能)
- 現実的(達成可能)
- 期限付き(時間制約あり)
3-2.移行リスクの評価と対策
マイグレーションには、データの損失、システムの停止、セキュリティの脆弱性など…様々なリスクが伴います。これらのリスクを事前に評価して、適切な対策を講じることが重要です。
例えば、データのバックアップ、システムのテスト、セキュリティ対策の強化などを行うことで、リスクを最小限に抑えることができます。リスクの評価は、プロジェクトの初期段階で徹底的に行いましょう。リスクの種類に応じて適切なリスク対策を施すようにしましょう。リスクマネジメントもマイグレーションプロジェクトを成功させるために必要な要素となってきます。
3-3.ベンダー選定と協力体制の構築
マイグレーションを成功させるためには、信頼できるベンダーに依頼することも重要でしょう。ベンダーの技術力、実績、サポート体制などを慎重に検討して、自社とマッチするベンダーを選びましょう。
ベンダーを選定したら、コミュニケーションを密にして進捗状況や課題を共有することで、スムーズにマイグレーションが進むように心掛けることが大切です。また、ベンダーを選定する際は複数の候補を比較検討して、見積もりや提案内容を詳細に確認してから決めることをおススメします。中長期的な付き合いになるので、ここでやりづらい会社を選ばないように注意しましょう。
そして、弊社はまさにマイグレーションを受託しているシステム開発会社です。システム開発において様々な体制を組むことができるのが強みでオフショア開発、ニアショア開発、オンサイト(常駐型)開発、受託開発など…お客様の状況に合わせてご提案いたします。と、文字だけであればいくらでも語れるのですが、直接話してみた方がスピーディーに進むと思います。なので、弊社の紹介はここまでとして、マイグレーションを検討している方はお気軽にご相談ください。相談は無料!です。
4.マイグレーション後の運用と保守
4章ではマイグレーションを導入した後の話をしたいと思います。導入して終わりではなくその後の保守・運用もやらないといけません。
一般的なシステムの保守・運用については、「 システムやアプリの運用保守とは?概要と外注をおススメする理由 」の記事をご参照ください。
4-1.移行後のシステム監視とパフォーマンス最適化
マイグレーションが完了した後も、システムの監視とパフォーマンス最適化は継続的に行う必要があります。システムの稼働状況を常に監視して問題が発生した場合には迅速に対応することで、システムの安定稼働を維持することができます。また、パフォーマンスを定期的に評価してボトルネックを解消することで、システムの効率を向上させることができます。
4-2.セキュリティ対策の継続的な実施
マイグレーション後も、セキュリティ対策は継続的に実施する必要があります。システムの脆弱性を定期的にチェックして最新のセキュリティパッチを適用するようにしましょう。ハッカーたちもどんどん進化しています。そこに対応するためにセキュリティ対策もどんどん進化しています。セキュリティが古いバージョンだと簡単に侵略されてしまう可能性が高まってしまいます。
また、外部攻撃だけでなく社内の従業員へのセキュリティ教育をして、セキュリティ意識を高めることも重要です。教育に関しては、教えるだけでなくテストを実施して理解度チェックすることも大事です。
4-3.トラブルシューティングとサポート体制
マイグレーション後には、予期せぬトラブルが発生する可能性が残念ながら存在します。トラブルが発生した場合に備えて、迅速なトラブルシューティングとサポート体制を構築しておくことが重要です。社内に専門チームを設置するか、外部のサポートサービスを利用するなど、自社の状況に合わせた体制を構築しましょう。
適切なトラブルシューティングとサポート体制は、システムの安定稼働を維持するために必要な要素となってきます。
「マイグレーション」まとめ
本記事ではマイグレーションについてまとめてきました。マイグレーションは、企業の成長戦略において非常に重要な要素です。明確な目標設定、リスク評価と対策、適切なベンダー選定、継続的なシステム監視、セキュリティ対策、トラブルシューティング体制など、様々な要素がマイグレーションの成功を左右します。マイグレーションを取り掛かるのにあたり少しでも参考になればと思います。
そんな弊社はマイグレーションを支援する企業の1つであり、システム開発会社です。お客様と一緒になってお客様の課題解決をシステムの提供という形で支援しています。また、様々な体制を組むことが強みでもあり、オフショア開発、ニアショア開発、オンサイト(常駐型)開発、受託開発など…お客様の状況に合わせてご提案いたします。相談は無料!なのでお気軽にお問い合わせください。