あなたは今、SIerと呼ばれる会社が何のために存在するのか、どんなことをしている会社なのか気になっているところではないでしょうか。
実は、SIerは日本独特な文化でもあり、海外はSIerと呼ばれる会社は日本ほど多くありません。ではなぜSIerが日本には存在するのか、、そんなところから紹介した記事となっています。
弊社はSESを主力に、海外の人材を活用したオフショア開発拠点をベトナムにラボとして持っている会社です。その中で請負という形で受託開発も一部しています。
そんな弊社からSIerについて分かりやすく紹介します。本記事を読んでいただき、外注する際の契約形態の検討材料に少しでもお役に立てたら幸甚です。
目次
1. SIerとは?
1章では、SIerってそもそも何なのか、その役割を紹介したいと思います。
1-1. SIerとは、システム開発や運用等を請け負う事業者
System Integrator (略して、SIer)とは、「システム開発を請け負う事業者」のことです。
システム開発だけでなく、コンサルティングから、システムの運用・保守などの業務まで請け負うケースがほとんどです。ゼロから相談に乗って、形を作るところまで一貫して対応します。
ここまでは、良くある定義付けですが業界に浸っている人から見ると、「システム開発を一次請けする会社」です。広告代理店みたいな立ち位置ですね。
社内リソースが足りなければ二次請け、三次請け、、と多重下請け構造が始まります。
1-2. SIerの具体的な仕事内容
システム開発における業務はほぼなんでもやります。SIerと呼ばれる会社はいくつかありますが、それぞれで得意分野が異なるので、類似実績が多い企業を選ぶことが重要になってきます。
主には以下のような仕事内容が考えられます。
- スマートフォンアプリやゲームのコンサル~開発
- ECサイトのコンサル~構築
- コーポレートサイト等のホームページのコンサル~制作
- ハードウェアの組み込みシステムのコンサル~開発
- ソフトウェアのコンサル~開発
- サーバーやネットワークのコンサル~構築
- AIを応用したシステムやアプリのコンサル~開発
- 上記すべての保守・運用
1-3. SIerとSESの違い
| 意味 | 契約形態 | 開発形態 |
SIer | システム開発を丸っと請け負う | 請負契約 | 自社内で開発 |
SES | システム開発のための人材を提供する | 準委任契約 | 客先で開発 |
System Engineering Service(略して、SES)とは、「システム開発をするために、エンジニアの労働力を提供する」ことです。
受注者は発注者に対して、自社で抱えているエンジニアもしくはさらにもう1社先のエンジニアを提供します。発注者から予め欲しいスキル等の詳細な情報をもらうことになります。
1-4. SIerが存在している意義(発注者のメリット)
それでは何のためにSIerという立ち位置の会社が存在しているのでしょうか?それは、ITに関わる業務は高度な知識を要求されることが多いからです。そのような人材は限りがあり、エンジニアを抱えている企業はそこまで多くありません。そんな企業を助けるために一気通貫でシステム開発ができるSIerが存在しています。
ちなみに米国はSIerと呼ばれる企業はほとんどありません。米国の文化として、内製化が基本的な考え方だからです。自社内にエンジニアがいるので、その人材が開発するケースがほとんどと言われています。
米国におけるSIerの立ち位置は、自社内だとマジで回らない!そんな時に活用されています。
2. SIerではどんな特徴を持った人が働いているの?
2章ではSIerで働いている人の特徴を紹介します。SIerは、プログラミングをするケースは少なく、コミュニケーション能力が問われるケースが多いポジションになります。
2-1. コミュニケーションを取るのが好きな人
SIerは接客業に近いところがあります。クライアントの要望をヒアリングして、それを取りまとめて形にしていく必要があります。クライアントとうまくコミュニケーションを取って進めることができる人が多い傾向にあります。
2-2. 手を動かす作業が少なくても良い人
SIerは、手を動かしてプログラミングを書く業務は想像よりも少ないです。
2-1の通り、接客業が中心になります。プログラミングのスキルを磨きたい人は、もう1個下の階層の企業に就職するケースが多い傾向にあります。
2-3. 個人よりもチームワークが好きな人
SIerが取り扱っている案件は規模が大きいものがほとんどです。
プロジェクトごとにチームを組んで、プロジェクト間の連携も重要になってきます。
大規模だと100名を超える案件もあります。100名の内訳も様々な会社から呼ばれて集まってチームを組んでいることが多いです。
2-4. 規則・規制を守れる人
SIerは機密情報を取り扱うケースも多く、貸与されたPC以外の使用は不可等の規則が設けられていることがほとんどです。そのような規則を守りながら仕事を進めています。
まあ、社会人なら当たり前に守るべきことではありますが…。
2-5. 収入よりも安定を求める人
SIerは、景気の影響が受けやすいポジションでもあります。システム開発はかなりの費用が掛かります。そのため、景気が悪いと依頼は来ないです。景気が良ければシステムを取り入れてさらなる生産性向上を目指す企業が多くなる傾向にあります。
しかし、既存システムの保守・運用は切っても切れないものなので、継続的に行われます。そのため固定的な売上は立つことになりますので、潰れることはほとんど考えられないでしょう。
3. SIerに勤める人のメリットは、なに?
SIerに勤めることで何かメリットがあるのか、3章では紹介します。
3-1. ITに関するトレンドを早く入手できる
クライアントとコミュニケーションを取るうえでIT知識は必ず必要になってきます。
また、IT業界はどんどん情報がアップデートされていく業界ですが、SIerは常に先を行く必要がありますので、新しい情報を入手しやすい環境にあります。
昨今のトレンドからしても、特にAIに関する情報は入手しやすいでしょう。
3-2. マネジメント能力が磨かれる
2-3の通り、チームワークが大事になります。
自分のチームをいかにスムーズに回すことができるか開発において重要になってきます。
チームのマネジメントをしていく中で自身のマネジメント能力も経験と共に磨かれていくでしょう。
3-3. 論理的思考でドキュメント化できるようになる
SIerはクライアントからの要望を筋道を正してドキュメント化する必要があります。
ドキュメント化した資料は、自分のチームのエンジニア等、関係者に共有して仕事を進める必要があります。経験と共にドキュメント化する能力が磨かれていくでしょう。
4. SIerと呼ばれる会社はどこ?
続いて4章では具体的にSIerと呼ばれる会社を紹介していきます。
4-1. SIerの会社の種類
SIerは全部で5種類に分類することができます。
・メーカー系SIer
ハードウェアで動作するシステム開発やインフラ系の案件が多い特徴があります。メーカーから仕事を請けて稼働することが多いので、メーカー側に出向することもあり得るでしょう。
・ユーザー系SIer
BtoC向けのシステム開発の案件が多い特徴があります。IT知識があまりない業界を相手にするケースが多い傾向があり、自社内で開発をするSIerが多いです。
・独立系SIer
グループ会社や子会社を所有していない会社になります。外部の事業者から営業して案件を受注するケースが多いので、様々なシステム開発に携わることができるとも言えます。
・コンサル系SIer
経営戦略から検討して、クライアントに寄り添って生産性を高めるためにどのようなシステムを開発したら良いか、企画立案を得意としている会社です。
・外資系SIer
グローバルな環境でシステム開発をしたい人には向いているかもしれません。例えば、米国で流行ったシステムを日本にも持ち込むために日本法人を立ち上げるケースなど見受けられます。
4-2. SIerの会社20選
SIerについて、5種類に分類しました。それぞれの代表的な会社を4社ずつ取り上げたいと思います。
分類 | 会社名 | URL | 特徴 |
メーカー系 | 日立製作所 | 社会インフラ系が強い | |
富士通 | 業務用サーバーが強い | ||
NEC | 認証系のセキュリティに強い | ||
東芝情報システム | 組み込み系に強い | ||
ユーザー系 | SCSK | フルスクラッチに強い | |
NTTデータ | 公共系に強い | ||
伊藤忠テクノソリューションズ | 海外製品を利用した開発に強い | ||
野村総合研究所 | 証券会社、投資信託系に強い | ||
独立系 | シンプレックス | 金融系に強い | |
オービック | ERPに強い | ||
都築電気 | 通信に強い | ||
大塚商会 | 取引先が多い | ||
コンサル系 | キーエンス | 低コストで提供できる | |
東京エレクトロン | 半導体製造に強い | ||
三菱総合研究所 | 国や自治体に強い | ||
ベイカレント | DX・先端技術に強い | ||
外資系 | アクセンチュア | BtoB領域に強い | |
アバナード | Microsoftの技術に強い | ||
PwCコンサルティング | 経営基盤の見直しからできる | ||
日本アイ・ビー・エム | BtoB領域に強い |
5. SIer選び(会社選び)のポイントはどこ?
様々な種類のSIerについて紹介しましたが、会社もたくさんありすぎて結局その会社に依頼したら良いか迷っている方もいるかもしれません。そこで5章ではSIerの会社の選び方のポイントを紹介します。
5-1. 類似の開発実績がある
今回依頼する予定のプロジェクトと類似する実績があるか確認しましょう。
企業のコーポレートサイトで確認することができますが、確認できない場合は個別に問い合わせしてみましょう。
ある場合は、実際に開発したときの画面を見せてもらえるとより想像しやすいと思います。
5-2. 本番リリース後も対応してくれる
システム開発は、実は本番公開してからが勝負です。
本番公開前に様々なテストを繰り返しますが、それでもエラーが発生するものです。
本番公開後のエラー改善のためにどこまで対応してくれるか、発注前に確認しておきましょう。
5-3. 会社の業績が安定している
発注先のSIerの業績が悪化した場合、発注していたシステム開発が滞る可能性が十分にあり得ます。
また、保守・運用においても同様です。代役SIerを探す必要が生じます。そのような事態を回避するためにも業績が安定している会社を選択すると良いでしょう。
6. SIerを活用したシステム開発の全体の流れ
6章では実際にSIerを活用したシステム開発の流れを紹介します。
6-1. 外注する前に要件を整理しよう
まずは、外注先を選定する前に下準備が必要です。以下の項目について、明確にしましょう。
- 外注する目的
- 目的を達成するために必要なスキルと人数
- 外注に掛けられる予算
- 業務を完了させる納期
- 上記3つの優先順位
(例)
- 外注する目的:自社ではスキル不足なため
- 目的を達成するために必要なスキルと人数:Java経験年数5年以上を3名
- 外注に掛けられる予算:1,500万円以内(予測:60万円×3名×6ヶ月=1,080万円)
- 業務を完了させる納期:半年
- 上記3つの優先順位:スキル>納期>予算
6-2. 外注先(SIer)の選定をしよう
5章に記載されているポイントに気を付けながら外注先を選定しましょう。1社だけではなく、最低でも3社以上から見積もりを取得するようにしましょう。金額が異なる場合は、それぞれの会社の強みを聞いて金額と内容に納得した上で最終決定しましょう。
6-3. 外注先に作業を依頼しよう
(1)契約関係の締結(業務委託、秘密保持など)
業務を依頼する人材を選定し、要件が合意したら、業務委託契約と秘密保持契約を結びます。契約書には法的な規定や責任範囲だけでなく、業務の範囲や支払い条件、期日、著作権、損賠賠償などの項目を盛り込む必要があります。かなり重要なフェーズですので、後のトラブル回避のためにも丁寧に契約内容を決めるようにしましょう。
※業務委託契約は下記の4種類に分類されます。
契約形態 | 内容 |
請負契約 | 仕様が既に決まっており、その仕様通りに完成品を仕上げる必要がある。納期を大幅に遅延してしまうと、損害賠償を請求される可能性がある。 |
派遣契約 | 人材を派遣してもらいたいときに選択する。派遣された人材への指示だしをすることができるので、他の契約形態に比べて作業は進めやすい。ただし、契約で締結した内容と異なる業務を強制した場合は、損害賠償を請求される可能性がある。 |
委任契約 | 登記申請などの役所に何か書類を提出する際など法律業務に関する外注を行う際に選択する。 |
準委任契約 | 法律業務外のセミナーの講師やSES業務の遂行を求める際に選択する。 |
(2)具体的な業務内容の説明
業務内容を具体的に説明します。業務開始後に依頼の追加や変更が発生したときは、速やかに連絡して報酬や納期などの条件の調整も行いましょう。
(3)作業の進捗管理
作業が開始しても、放置せずに定期的に進捗管理することが重要です。可能な範囲で週に1回定例会を実施して進捗を共有してもらえるのがベストでしょう。結果的に納品後の大きな乖離や質の高い納品に繋がるでしょう。
事前にトラブルが発生したときの緊急連絡先や誰が何をするのか体制図を提供してもらうようにすればより解像度高くコントロールすることができるでしょう。
6-4. 納品物を受け取ろう
納品報告を受けたら履行内容の確認をしましょう。事前に取り決めした契約内容に沿って行われたか確認します。修正の必要があれば、修正指示をして再納品を依頼するようにしましょう。進捗管理をしっかりとしていれば大きな修正点は生じないはずです。
6-5. 請求しよう
業務完了後に、請求書を受け取り契約書の支払条件に沿って支払いましょう。
7. まとめ
本記事ではSIerについて、存在している意義、どんな人が働いているのか、SIer会社選びまで紹介いたしました。
SIer選びに苦戦している人は、オフショア開発も視野に入れてみてはどうでしょうか?オフショア開発であれば日本独自の多重下請け構造ないので、一次請けした会社がすべて責任を持って対応します。
弊社は会社を立ち上げたから25年が経ちます。オフショア開発、ニアショア開発、常駐型と様々な形で体制構築できることが強みです。システム開発で行き詰った時には、どんな些細なことでも、お気軽にお問い合わせいただければと存じます。