ベトナム人エンジニアのレベルを日本人の視点から徹底分析

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プログラマー、システムエンジニアを経て2001年にサイバーエイド株式会社を設立。
2008年に株式会社インタラクティブ・コミュニケーション・デザインにジョイン後は、2014年にベトナム・ホーチミンでオフショア開発拠点を立ち上げ、2017年に現地法人ICD Vietnam Limited Liability Companyを創業し現在に至る。
創業以降は東京のみならず、各国内地方拠点(札幌、名古屋、大阪)においても積極的にオフショア開発を推進し、国内のITエンジニア不足の解消を目指す。

あなたは今、ベトナムのオフショア企業への依頼を考えている中で、エンジニアのレベルを心配していませんか?

利益目標を達成するには売上を増やすか費用を下げるしかない。しかし開発部門では売上に大きく寄与する事は難しい。せっかくプロジェクト増員の提案をもらっても、エンジニア不足の昨今では自社リソースも限られており、新規採用コストも大きいため利益はあまり増えない…。

かといってオフショア開発企業が多いベトナムではエンジニアが低単価で雇えると聞いたものの、今の高い品質を担保できるか不安なので踏み切れずにいる…。

 

ベトナム人のエンジニアは、ずばり「下流は強いけど上流は弱い」です。

 

私は日本でエンジニアとして3年間経験を積みました。

そして現在はベトナムで6人の開発メンバーと日本の開発現場を繋ぐ、ブリッジSEとして働いています。

日本とベトナム、両方の働き方やレベルを把握している私が、プログラミング能力とドキュメント作成能力の観点からレベルを解説します。

ベトナム人エンジニアの特性を理解して、ベトナムでのオフショア開発を利用するか検討する材料にしてください。

 

1. ベトナムのエンジニアのレベルは非常に高い

1.1 プログラマとしての能力は抜群

ベトナム人エンジニアのプログラミング能力やインフラへの知見は抜群です。

扱えるプログラミング言語やフレームワークの数は日本人に劣らない上、深く理解しているエンジニアが多いです。

AWSやGCPなどクラウドをはじめとしたインフラも広く普及しており、環境構築可能な方も多い印象があります。

ベトナムは今まさに発展している国であるため、日本のように旧来の技術に固執する必要性が低い事が原因です。

 

実際に私が関わったプロジェクトでは、これらを組み合わせた以下のような事例がありました。

  1. Next.jsのSSR、SSGを利用してWebページの読み込み速度を向上
  2. Webアプリ上で収集されたログを解析し、エラーを解消するためのコード修正

新卒入社1年目のエンジニアが完了

日本とベトナム両方で働いた私からの目線だと、プログラマとしての能力を比べるとベトナム人の方が優秀な方が多い印象です。

一体なぜこのような差が生まれたのでしょうか?

1.2 情報系学部出身者の割合が高く、若い人材が多い

何とベトナム人エンジニアの83%が情報系学部を卒業しています。

日本とベトナムにおけるIT人材の情報系学校出身率を示したグラフ

ベトナムのデータはIT Viec salary report 2023より引用

日本のデータはIT人材白書2020 > 先端IT非従事者のうちIT・情報系専攻の割合を引用

それに比べて、日本人エンジニアは2536%しか情報系学部を卒業していません。

学生時代に専門性を身につけた方が多いベトナムでは、基礎能力の高さ故にプログラマとしての能力が高いのかもしれません。

また平均年齢が低く、新しいことを柔軟に取り入れる事ができる点も能力向上に活きています。

1.3 プロジェクト経験が豊富

ベトナム人エンジニアはプロジェクト経験も豊富です。

アジアやヨーロッパなどの外資系企業がオフショア企業を多く設立しており、そこで働くエンジニアは多様なプロジェクト経験を積んでいます。

ではなぜベトナムには外資系のオフショア企業が多く設立されているのでしょうか?

 

実はベトナム政府はシステム開発を行う外資系企業に対し、絶大かつ長期的な減税措置を適用しているのです。

例えば以下のような措置が適用されています。

・事業開始から15年間は法人税10

・黒字発生から4年間は法人税免除、その後9年間は50%減税

日本の基本法人税率が23.2%とすると、非常に大きな節税が実現できることがわかります。

例えば2024年に事業を開始し、2025年に黒字化した場合の法人税は以下の通りです。

黒字化における法人税の変化を記した表

これにより外資系企業は、単価の高い先進国にシステム開発サービスを提供する企業をベトナムに多く設立しました。

これらの企業の顧客はベトナム人ではない事が大半であるため、顧客の言語や商慣習を理解する外国人が上流を担当し、ベトナム人は開発に専念する体制が定着しました。

結果、ベトナム人はプログラマとしての知見を深めたのです。

以下の図を見ると、ベトナムのIT業界では外資系企業が半分を占めることがわかります。

単独の国では日本が最多というのも驚きです。

ベトナムIT企業における出資元国 割合

IT Viec salary report 2023より引用

ここまでで、ベトナム人エンジニアのプログラマとしての能力は非常に高いことがわかりました。

ではSEとして必要なドキュメント作成能力はどうでしょうか?

2. ベトナム人エンジニアはドキュメント作成が苦手

2.1 高度な語学力が求められる事が理由

システム開発では仕様書から設計書、試験仕様書など様々なドキュメントが必要になります。

これらは認識違いを防止する目的で厳密な言葉遣いが要求されますが、これは日本語ネイティブな人でも簡単なことではありません。

そのため、日本語が堪能なベトナム人であってもドキュメント作成が非常に難しいというのが実情です。

加えて、国や企業ごとにシステム開発におけるドキュメントの役割や立ち位置が異なります。

他の外資系企業でドキュメント作成を担当したベトナム人エンジニアが、日本企業向けのドキュメント作成にも優れているわけではない点に注意しましょう。

しかし、前述した通りベトナム人エンジニアのプログラマとしての能力は非常に高く、英語を話せる方も多いです。

したがってドキュメントのフォーマットを重視しないプロジェクトや、ドキュメント作成自体が不要というプロジェクトであれば気にならないでしょう。

2.2 上流工程の経験が足りない

前述の通り、ベトナムのIT産業には外資系企業が多数存在しており、ベトナム人エンジニアは開発を担当するのが一般的です。

つまり要件定義や基本設計といった上流工程には携わらない事が多く、経験豊富な日本人SEのように、エンドユーザーの業務やビジネスのあり方を考慮したプログラムを書く事に慣れていない方が多いのです。

3. エンジニアのレベルに関するよくある質問

ここまでベトナム人エンジニアの長所と短所を紹介しました。

次にベトナム人エンジニアのレベルに関して、よくある質問と私なりの回答を紹介します。

3.1 ベトナム人エンジニアのプロジェクト管理能力は高いですか?

プロジェクト管理能力も高いです。

スクラム開発に対する理解も深く、効率的かつ柔軟なプロジェクト運営を行うことができます。

ただし、文化的な違いや業務プロセスの違いからくる課題は存在するため、初期段階でしっかりとしたコミュニケーションを取り、プロジェクト進行上で必要なブランチ戦略やコーディングルールについては明文化する必要があります。

3.2 ベトナム人エンジニアが得意とする領域を教えてください

Web系のシステム開発を得意としています。

なぜかというと一般的にオフショア開発を依頼する場合は、比較的技術的なハードルが低く、開発環境の強固なセキュリティが要求されないWeb系やモバイルアプリ開発の案件が多いからです。

そのため、オフショア企業が多いベトナムではWeb系のシステム開発が得意なのです。

4. まとめ

本記事ではベトナム人エンジニアのレベルを、プログラミング能力とドキュメント作成という2つの観点から分析しました。

それぞれのレベル感をまとめると以下の通りになります。

  1. プログラミング能力は非常に高い
  2. ドキュメント作成は苦手

オフショア開発においては国民性やプロジェクトとの親和性を考え、それぞれの長所と短所を補うように開発体制を構築する事が大切です。

ICDベトナムではベトナム人エンジニアの特性を踏まえ、ベトナム人エンジニアが開発を、日本人のエンジニアが日本のお客様とのコミュニケーションを担当する体制を採用しています。

開発に関するご相談をお受けしておりますので、お悩みの方はどうぞお気軽にご連絡ください。

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プログラマー、システムエンジニアを経て2001年にサイバーエイド株式会社を設立。
2008年に株式会社インタラクティブ・コミュニケーション・デザインにジョイン後は、2014年にベトナム・ホーチミンでオフショア開発拠点を立ち上げ、2017年に現地法人ICD Vietnam Limited Liability Companyを創業し現在に至る。
創業以降は東京のみならず、各国内地方拠点(札幌、名古屋、大阪)においても積極的にオフショア開発を推進し、国内のITエンジニア不足の解消を目指す。
ICDベトナムがエンジニア不足を解決します!
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